地球の限界「プラネタリーバウンダリー」
「プラネタリーバウンダリー」は、人類が地球上で持続的に生存するために、 超えてはならない9つの地球環境の境界値を示した概念です。2009年にストックホルム大学などの研究者たちによって提唱されました。「地球の限界」あるいは「惑星限界」とも言われています。地球温暖化をはじめ人類が抱える難題を理解するキーワードとして 、あつかわれています。
9つの境界値と現状
1.新規化学物質(Novel entities)
もともと自然界にはなかった新規化学物質は、人間が自然界に放出したことで、他の生きものに悪影響を及ぼしたり環境を変えたりしています。
2.成層圏オゾン層の破壊(Stratospheric ozone depletion)
オゾン層の破壊により、皮膚がんや目の病気、免疫機能異常の増加、細胞内のDNAの破壊といったさまざまな問題が考えられます。
3.大気エアロゾルによる負荷(Atmospheric aerosol loading)
自動車や工場からの排気ガスによって、大気汚染が進み、健康被害や酸性雨などの問題を生んでいます。
4.海洋の酸性化(Ocean acidification)
大気中の二酸化炭素が溶け込むことで、海水の酸性度が上がり、海洋生物に悪影響を与えています。
5.生物地球化学的循環(Biogeochemical flows)
肥料や畜産業などの農業活動によって、窒素やリンの循環が加速し、環境負荷が高まっています。
6.淡水利用(Fresh water change)
私たちが使えるのは淡水であり、その量は地球上の水の2.5%に過ぎません。しかもそのほとんどは、北極や南極にある氷として存在しており、本当に使える淡水(河川や湖、地下水など)は、わずか0.8%だけなのです。
7.土地利用の変化(Land-system change)
森林伐採や過剰な耕作によって、土壌が劣化し、農作物の収穫量減少や洪水などの問題が発生します。
8.生物圏の一体性(Biosphere integrity)
絶滅の危機にある生きものは4万種以上にのぼります。
9.気候変動(Climate Change)
地球温暖化は、異常気象や海面上昇を引き起こし、生物多様性に悪影響を与えます。
2023年のレポートによると、すでに9つの境界値のうち、6つが限界を超えているとされています。緑の範囲が、限界までの閾値を表していて、それを超えると赤色に変わります。時計回りに、新規化学物質(Novel entities)、生物地球化学的循環(Biogeochemical flows)、淡水利用(Fresh water change)、土地利用の変化(Land-system change)、生物圏の一体性(Biosphere integrity)、気候変動(Climate Change)の6つの項目で境界を上回りました。
未来への展望
これらの課題を克服するためには、持続可能な社会への転換が不可欠です。再生可能エネルギーへの転換、省エネルギー化、資源循環型社会の実現、森林保全などが求められます。私たち一人ひとりができること。日々の生活の中で、環境負荷を意識することはとても大切です。省エネ、節水、リサイクル、エコな商品を選ぶなど、できることから始めてみましょう。
